電源ユニットの消費電力と電源容量

電源

電源ユニットの消費電力と電源容量

電源ユニットを選ぶ時に問題になってくることに、パソコンの消費電力と、電源ユニットの電源容量の2つがあります。

あなたのパソコンにちょうど良い電源ユニットは、消費電力の約1.5倍程度以上の電源容量のある電源ユニットです。

ではなぜそういう話になるのかを、順を追ってお話します。

最初に、そもそもの消費電力の計算方法から見てみましょう。

あなたのパソコンの消費電力

消費電力の計算は非常に面倒です。

WEBサイトによってはある程度のハードウェアの情報を入力すると自動計算してくれるところもありますので、そういう情報を利用するのも良いでしょう。

では、自分でざっと計算できないのかなと言うことで、まずは主に使用する部品を並べてみましょう。

CPU TDPに65Wなどと書いてある

マザーボード 25Wくらい。正確にはわからないので、50Wを見ておくと安全。

メモリ DDR4のメモリで、大体5w、ゲーム用だとしても10W程度。2枚組が基本なので、10~20Wと考える。

グラフィックボード 100W以上。大体の場合はメーカーのスペック表に書いてある。

SSD 3W程度

ハードディスク 起動時でも25W程度、通常使用では10W程度。

光学ドライブ 30W程度。

ファン 3W程度で、2個は使うと考えて6W。

最低の使用環境で考えてピーク時の電力とアイドル時を30%稼働と仮定した場合の数値を()内とすると、CPU65W(22)、マザーボード50W(15)、メモリ20W(10)、グラフィックボード150W(45)、SSD3W、ハードディスク25W(7.5)、光学ドライブ30W、ファン6W。

ピーク時の電力でも約350W、アイドル時では約140W程度なので、500~550W前後あれば大丈夫と言うことになります。

そもそも、消費電力の約1.5倍見当で計算していますので、多少の誤差はカバーできます。

問題なのは、本来であれば通常使用の消費電力が電源容量の50%が理想で、かつMAXの消費電力に対してカバーできると言うのが最も良いのですが、正直これではアイドル時には25%程度の負荷と言うことになります。

50%の負荷に近づけたいのですが、ここはしょうがないとある程度妥協しましょう。

ここで求めた電源容量でちょっと注意していただきたいのが、今後のパソコンの拡張に関してです。

もしもここに同じグラフィックボードをもう1枚追加したとします。

そうするとパソコンの消費電力は150W増加して500Wに跳ね上がります。

マザーボードは大目に消費電力を計算してありますが、それでも480W程度は必要でしょう。

これは先ほど計算した500~550Wから見ると本当にギリギリになります。

逆にグラフィックボードがいらないと言う選択をした場合、200Wで済んでしまいますので、350Wもあれば十分です。

このように、今パソコンをどのように使うのかと言うことと、今後どのようにしていくのかと言うことの両方を考えて電源ユニットの電源容量は考えなければならず、特にグラフィックボードの消費電力は過激なほど大きいので注意が必要です。

さて、パソコンの消費電力と電源ユニットの電源容量の関係性のお話で、負荷が25%だの50%だのと言う数字の話が出ていますが、これは何のことでしょう?

これには、電源ユニットの品質を表してくれる80PLUS認証のお話が絡んできます。

80PLUS認証

電源ユニットは、家庭用電源の100V交流電圧をパソコン内で使える直流電圧に変換します。

交流から直流に変換するときにどうしても電力が熱となって失われてしまうのですが、どれだけ損失なく変換できるかを表している認証です。

80PLUSというのは、電圧変換効率が80%以上の高性能であると示す認証ですが、その中にもさらにTITANIUM・PLATINUM・GOLD・SILVER・BRONZE・STANDARD(無印)の6グレードがあります。

各グレードでの電圧変換効率を比べてみましょう。

負荷10% 負荷20% 負荷50% 負荷100%
Titanium 90% 92% 94% 90%
Platinum 90% 92% 89%
Gold 87% 90% 87%
Silver 85% 88% 85%
Bronze 82% 85% 82%
Standard 80% 80% 80%

ここで出てきました、負荷20%・50%・100%での変換効率。

電源ユニットの変換効率は80PLUS認証を取得していれば、80%以上の変換効率は保障されていて、グレードが高くなるとさらに変換効率が上がります。

しかし、グレードが高い認証の内容を見てみると、負荷が50%のときが最も変換効率が高くなっています。

この話が、パソコンの消費電力が電源ユニットの電源容量50%になると都合が良いと言う話につながります。

また、電源の変換効率は、ここから高くなっても低くなっても悪くなる傾向があります。

特に10%まで低下した場合の変換効率を保証しているのは、最上級のTitaniumだけです。

そのため、アイドルの時の消費電力が、電源ユニットの電源容量に対して低すぎるのも良くはないのです。

まさに、ちょうど良い電源容量の電源ユニットを使うのが、電気代にもお財布にも優しくなります。

ただ、電源容量の余裕が大きな電源ユニットを使うのにもメリットはあります。

そもそもの設計が大きな電力の変換を目的に作られていますので、少ない電力の変換だけをするのであれば電源ユニットに使用されている部品に対する熱によるダメージが少なくて済む可能性があり、その場合は電源ユニットの寿命が延びることが期待できます。

次に気にしていただきたいのが、12V電源の出力方法の種類です。

これには、12Vの出力を1系統で行うシングルレーンと、2系統以上で行うマルチレーンの2種類があります。

シングルレーンとマルチレーン

シングルレーンは1つ、マルチレーンは2つ以上の12V出力用の系統を持ちます。

12Vの出力は他の電圧に比べて様々な部品に使われていることから、安定した電力供給と言う意味では問題を抱えることもあります。

それを解決するためにあるのが2つの方式です。

それぞれのメリット・デメリットをお話します。

シングルレーン

電源ユニットの12V出力を1系統にしてあります。

メリットは、電源ユニットには電源容量があり、それ以上の出力は望めません。

例えばある電源ユニットの12V出力電流の最大値を40Aだとすると、12Vを1系統にする場合には40Aに近い電流を必要とする部品の場合でも接続することができます。

デメリットは、ノイズを発生させやすい部品、例えばアナログ調整タイプのファンコントローラーなどが接続されている場合、発生したノイズは電源ユニットの12V系統を伝わって他の部品にも伝わってしまう可能性があります。

また急に特定の部品が大電流を必要として電源ユニットの12V出力の動作が不安定になった場合、同じ系統につながれている部品もこの影響を受けてしまう可能性があります。

マルチレーン

電源ユニットの12V出力を複数系統に分けて行うことができます。

メリットは、12Vの電力供給を複数の系統で行えるため、ノイズの多い部品を使う場合や急激な電力消費の変化が起こりそうな部品があっても、その部品だけ別系統に分ければ他の部品が影響されません。

デメリットは、12Vで供給でき出力電流の最大値が下がってしまい、大電流が必要な部品の使用ができなくなってしまうことと、各系統によってどのくらい消費電力があるのか自分で把握しなければならない事です。

例えば、先ほどと同じように電源ユニットの12V系統の出力の合計が40Aの場合、これを4系統に分割すると1系統が使えるのは10Aまでとなります。

仮に20A(12Vの場合240W)の消費電力を必要とする部品を使用したいと思った場合、どこにつないでも出力をオーバーしてしまうため、使用することができません。

また、1つの系統にハードディスクを10台接続するなど極端に数を増やしてしまったりすると、電力供給が不安定になり起動できなくなったりします。

さすがにハードディスク10台は極端ですが、トータルで知らず知らずに1系統の電源容量をオーバーしてしまう可能性があると言うことを考えながら接続を工夫する必要があります。

マルチレーン 12V/480Wで2系統の場合

どちらの方式も一長一短で、選ぶのはなかなか難しいです。

ただ大まかには、ゲームに使用するグラフィックボードのように大電流を必要とする部品を使用する場合はシングルレーンの方が良いでしょう、マルチレーンでは最大電流値が足りないかもしれません。

また、回転する部品やそれをコントロールする部品、特にノイズ対策があまり行われてなさそうな部品を多用する場合などはマルチレーンの方が良いでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました